わが衣手に雪は降りつつ ― 天智天皇の「わが衣手は露にぬれつつ」と類似の表現。天智天皇の歌は、作者不明の歌が変遷して御製となったものであるが、この歌は、光孝天皇が皇子であった時の作品で、正真正銘の御製。降りつづく冷たい「雪」を、「君がため」「春の野」「若菜」という温かな表現が解かすかのような、やさしく穏やかな印象の作品になっている。天智天皇の御製が、理想的な君主像を象徴している一方で、光孝天皇の御製からは、温厚な人柄をうかがい知ることができる。